番外編
宮澤賢治作 童話集「注文の多い料理店」序
わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびらうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。
わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらつてきたのです。
ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるえながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです
ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。大正12年12月20日 宮 澤 賢 治
朗読:みさきすずか
§ 当サイトは、iTunesでのビデオキャストを目的とした仕様のため、その場でみられる機動性に欠けていました。
このたび、YouTube にアップした画像を併置する処理をすませ、画質も大幅によくなりました。
ただ音質につきましては、会場内でのビデオ録画のため、あまりいい状態とはいえませんが、音声のみのポッドキャスト(すゞはらひ配信分)は別系統で録音しておりますので、もうすこし聴き取りやすいかと存じます。
音声版はこちらへ。
(2010/6/15)
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